記録媒体の物理的限界
外部記憶装置、記録媒体には物理的な限界が
一般的な複製保存だけに依存することが危険であるという理由のひとつに、外部記憶装置や記録媒体の持つ物理的特性や脆弱性という問題があります。たとえばディスクを回転させるメカニズムとこれに接触して磁気信号の読み書きを行う針(センサー)からなるハードディスクは機構的にたいへん繊細で衝撃など物理的ストレスに弱く、かつ寿命も短い場合は数年程度という現実があります。またCD-ROMやDVD-ROMなどの記録媒体は樹脂性で高温に弱く、読み書きができる寿命も平均2年程度とされています。一方、手軽なUSBメモリは静電気に弱く、落雷時の高電圧で破壊されやすく、かつ水晶振動子を内蔵していることから衝撃にも弱いという特性を持っています。さらに小型軽量なために紛失しやすく盗難されやすいという危険性も。重要データを保存する場合は機器やメディアの特性を考慮に入れ、それぞれの長所や欠点を補完するような活用法を採用する必要があります。さらに一歩進んだ安全策としては、ネットワーク上にある外部サーバにデータをバックアップする、落雷、停電時にも機器が影響を受けずに済むよう徹底した対策をとることも併せて検討したいところです。
一般的な記録メディアの脆弱性
火災・地震耐性 | 落雷・瞬断耐性 | 物理的強度・寿命 | その他取り扱い | |
---|---|---|---|---|
パソコン 内臓HD 外付HD |
△家屋やビル倒壊などで機器が完全に破壊されたり、火災で焼けた場合などはデータ復旧がきわめて困難になることがある。 | ×落雷・瞬断時にもっとも影響を受けやすく、物理的障害によってデータの読み書きが不能になることがある。 | △繊細な部品の集合体からなる機構で機械的強度は高いとはいえない。落下、転倒、衝撃などで容易に壊れることがある。 | △ハードディスクの寿命は個体差が著しい。また回転部、摺動部から構成されているため磨耗、摩滅が進みやすい。 |
CD-ROM・DVD-ROM | △石油系樹脂から出来ているため高温に弱く、火災では変形、燃焼しやすい。またフロッピーディスクに用いられている磁性体は熱で磁力を失う性質がある。 | ○PCのドライブ上にあっても、電気的に接触していないため影響はない。 | △保護層の樹脂劣化により読み書き可能な寿命は平均2年程度とされている。 | △表面の傷や汚れなどでデータの読み書きに障害が出ることがある。 |
フロッピーディスクなど磁気媒体 | ×落雷時にPCのドライブ上にあれば、電磁的に何らかの影響を受けることがある。 | ×磁気、埃、汚れ、高温多湿、紫外線に弱く、記録保持や保管には細心の注意が必要。 | ×記録媒体としてはすでに時代遅れで、次第に入手困難になりつつある。 | |
USBメモリ | ×電子部品の集合体であるため熱に弱く、火災は致命的。また筐体がプラスチック製なので物理的にも脆弱。 | ×落雷時にPCのドライブ上にあれば、データ消失の可能性も。さらに静電気に対しても弱いため取り扱いに注意。 | △データ保持期間は5~10年、書き換え可能回数は5000~1万回。水晶発振子を内蔵しているため衝撃には弱い。 | ×手軽に使える反面、誤って初期化したり、データ消去する危険性も。小型なため盗難にも遭いやすい。 |
ハードコピー | ×紙なので火災には絶望的に弱い。地震では破砕が生じていなければ再利用が可能。水没では印刷(記録)面が消える可能性がある。 | ◎落雷により火災が発生するような場合を除いては電気的にも物理的にもまったく影響を受けない。 | △情報や記録の保持という点では優れているが、活用面ではデジタルデータのような柔軟性に欠ける。 | △情報や記録の保持という点では優れているが、活用面ではデジタルデータのような柔軟性に欠ける。 |
閲覧数 6,192 views | 更新日 11.03.31